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終戦から80年目の8月に戦争を考える

更新日:8月15日

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毎年この時期になると、第二次世界大戦、太平洋戦争の終戦や原爆投下など戦争について、テレビでは特集が組まれ、本屋さんには特設コーナーができます。

もちろん、"戦後80年"は日本にとっての80年であり、世界に目を向ければ、ロシアの一方的なウクライナ侵攻戦はいまだに続いているし、ガザ地区での戦闘もやまず、多くの子どもたちが飢餓によって命を落としている状況を、メディアを通じて観たり聞いたりすると心が痛みます。

それでも、というか、だからこそ、80年間平和を維持してきたことに誇りを持ち、未来につなげていくことが今を生きる私たちの使命でもあるでしょう。

とはいえ80年という時間が、戦争の実像を着実に風化させていっていることも事実だと思います。日本では近代以降これほど長く戦争のない時間を過ごしたことはないわけで、総務省人口推計によれば、2023年10月時点で戦後生まれの人の割合は87.9%に達していて、いかに戦争の記憶を次世代に継承していくかが課題となっています。


戦争は、SDGsの目標16「平和と公正をすべての人に」に直接的に影響し、達成を妨げる大きな課題です。そしてそれだけにとどまらず、今まさにガザ地区で進行しているように深刻な飢餓を生み、難民を増加させます。教育や医療へのアクセスの制限が発生し、経済活動の停滞を呼び起こします。さらに、自然環境を破壊し、地球温暖化を進行させてしまう可能性すらあるなど、SDGsの多くの目標の達成を阻害します。


それにもかかわらず、近年の世界の流れを見ていると自国優先主義や、さまざまな利害の対立や軋轢を力による解決を試みようとする動きなどもみられ、核兵器を含む軍備拡張の方向に向かっているように感じます。それは、日本も例外ではなく、核兵器を装備することが最も安上がりな安全保障政策だなどと、とんでもないことを言い出す国会議員がでる有様です。

歴史学者のユヴァル・ノア・ハラリは、著書「サピエンス全史」の中で、軍備拡張競争について、"(軍備拡張競争は)けっきょく、最後まで力の均衡は以前とほとんど同じままだが、その間に教育や医療に投資できたはずの何十億ドルものお金が、武器に使われる"と記しています。敵国に対抗して軍備を拡張すれば、それに対抗して敵国側も同じぐらい拡張する。それなら、「抑止力」というのは、私たちの、あるいは指導者の創り上げた幻想なのではないかとさえ思えてしまいます。

同じ著書の中で、ホモ・サピエンスの歴史は、「私たち」と「彼ら」を統一に向かう大きな流れの中にあるとも言っていますが、近年はむしろ「私たち」と「彼ら」を明確に分けようとする、さまざまな動きや発言が世界中でみられます。

2025年8月15日 靖国神社
2025年8月15日 靖国神社

戦後80年をかけて私たち人類は、多国間の機関や条約、協定などを積み上げてきました。それは戦争によって失われたモノ・コトの大きさの反省に立って、未来に向けて発展していくためには"戦争は割に合わない"という共通認識に立って編み出したことだったはずです。先人たちが戦争体験を経て培ってきた知恵・英知を改めて振り返り、「戦争」そして「未来」について考える8月にしたいと思います。

 
 
 

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