COP30開幕
- Shuichi Yamamoto
- 2 日前
- 読了時間: 3分

気候危機回避を目指す国際会議、「国連気候変動枠組条約第30回締約国会議(COP30)」が、ブラジルのアマゾン川河口の都市であるベレンで今日11月10日から21日までの会期で開催されます。
今年は、産業革命前からの平均気温の上昇を「2℃より十分低く」、さらに「1.5℃に抑える努力を追求すること」を掲げたパリ協定の採択から10年の節目の年にあたります。一方で、昨年(2024年)は地球の平均気温が初めて年間を通じて1.5度を突破し、パリ協定の目標である1.5度目標達成が危ぶまれています。
近年、世界中で洪水や熱波、森林火災などが多発していますし、アマゾン川流域をはじめとした熱帯雨林の減少や北極・南極の氷床の融解など、地球環境が後戻りできない「ティッピング・ポイント(転換点)」に近づいているのではないかと危惧されています。
そんな中、米・トランプ政権によるパリ協定からの離脱をはじめとして、気候変動政策に対する様々な逆行や揺り戻しが散見されると感じるのは私だけではないと思います。だからこそ今回のCOP30において、世界が団結して気候変動に立ち向かい続ける姿勢を、具体的成果とともに示すことができるのかが試される重要な場になると期待されます。
現地7日に今回の会議に先立ち行われた首脳級会合においては、議長国ブラジルのルラ大統領が「COP30を真実のCOPにする」として、温暖化による人命や経済への被害は甚大だとして、「今こそ科学的な警告を真剣に受け止める時だ」と強調し、トランプ大統領を名指しこそしなかったものの、気候変動に懐疑的な政治家らは「過激派勢力」で、票を得るために「虚偽を広めている」と痛烈に批判したり、南米チリのボリッチ大統領は、トランプ氏が9月の国連総会で気候変動を「史上最大の詐欺」と呼んだことについて「虚偽だ」と指摘。その上で、「科学と真実の価値を再認識する必要がある」と訴えました。さらに、フランスのマクロン大統領が「気候に関する偽情報は民主主義への脅威だ」と危機感をあらわにするなど、気候変動に関する科学的知見に向き合うよう求める声が多数上がったようです。
歴史学者のユヴァル・ノア・ハラリ氏も著書「NEXUS 情報の人類史」の中で、民主主義の利点として"人権"と"公民権"の2点を上げたうえで、唯一、民主主義において絶対に提示されてはいけない選択肢として「真実を隠したり歪めたりするという選択肢だ」と指摘している。現在、気候変動に懐疑的な指導者に求められているのは、科学的に証明された事実に刮目したうえで、未来の人類や地球に対して、現代に生きる我々に何ができるかを考えることだと思います。
今回のCOP30は、史上初めてアマゾン地域・ブラジルで開催されることもあり、「ネイチャーCOP」と呼ばれています。その背景には、これまでのCOPが温室効果ガス削減、すなわち緩和策が中心であったのに対し、COP30では自然資本、自然を活用した解決策(NbS)、生態系回復、先住民と地域共同体の知見活用、社会的包摂、ジェンダーも含めた幅広いステークホルダーとの協調といった、「自然との共存」の観点が重視されていることが挙げられます。
会議の交渉過程では、各国政府が主要な立場を占める一方で、NGO、民間企業、自治体など非国家主体(non-Party stakeholders)の役割が年々増大しています。COP30でも、こうした主体の行動が交渉成果を補完し、実践的な適応・緩和の加速に寄与することが期待されていて、政府交渉の成果だけでなく、多様な主体の取り組みを含めた「全社会的な気候行動(whole-of-society approach)」がCOP30の成功のポイントとなりそうです。





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