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持続可能な開発報告書2024



The SDGs and the UN Summit of the Future. Sustainable Development Report 2024  © Jeffrey D. Sachs, Guillaume Lafortune and Grayson Fuller
The SDGs and the UN Summit of the Future. Sustainable Development Report 2024  © Jeffrey D. Sachs, Guillaume Lafortune and Grayson Fuller



SDGsに関する世界最大のネットワークであるSDSN(国連持続可能な開発ソリューションネットワーク)は、2024年6月17日に2024年版の持続可能な開発報告書を公開しました。


この中で特に重要な調査結果を5つ指摘しています。


その1つ目は、2030年までに世界的に達成できるであろうとされるSDGターゲットは、わずか16%で、残りの84%は進捗が停滞または後退しているということです。特に目標2「飢餓をゼロに」、目標11「住み続けられるまちづくりを」、目標14「海の豊かさを守ろう」、目標15「陸の豊かさも守ろう」、目標16「平和と公正をすべての人に」の5つは著しく目標から逸脱しているとしています。もちろん国や地域によるバラツキは大きいものの、全体としての進捗は遅すぎると指摘しています。


2つ目は、欧州、特に北欧諸国は引き続きSDGsの達成に向けて世界をけん引しており、BRICS(ブラジル、ロシア連邦、インド、中国、南アフリカ)とBRICS+諸国(エジプト、エチオピア、イラン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦)も全世界の平均的な進捗を上回っています。とはいえ、これらの国々でさえいくつかの目標に対しては大きな課題を抱えています。また、東アジアと南アジアにおいても大きな進捗がみられる一方で、小島嶼開発途上国(SIDS)を含む最も貧しく脆弱な国々においては大きく後れを取っており、その格差は広がり続けています。


3つ目は、持続可能な開発は依然として長期的な投資課題であり、低所得国(LIC)と低中所得国(LMIC)は、持続可能な開発目標を達成するために大規模な投資を行えるような資金へのアクセスの確保が必須であり、そのための新たな機関や調達方法などの新しいソリューションが必要がとしています。


4つ目として、SDGsのような世界的な課題に対しては、当然世界的な協力が必要になると考えられますが、国連を基盤とした多国間主義への取り組みにおいて米国はなんと最下位に位置付けられています。これは条約批准、国連総会での投票、国連機関への加盟、紛争や軍事化への参加、一方的制裁の使用、国連への財政的貢献などをもとに、新しい国連を基盤とした多国間主義への支援指数(UN-Mi)を算定してランク付けしたものですが、米国はその後も2025年に入って、パリ協定からの離脱やWHO脱退など、SDGsが目指す社会の実現に向けては何とも憂慮される事態が続いています。


そして5つ目に、食料と土地システムに関連するSDGターゲットは、特に大きく遅れているとしています。国際的なサステナビリティ研究機関の国際応用システム分析研究所(IIASA)と持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)が運営する食料・農業・生物多様性・土地利用・エネルギー(FABLE)コンソーシアムは、22か国から80人以上の研究者を集めて、食料安全保障、気候変動緩和、生物多様性保全、水質に関する達成シナリオを検討・評価しました。それによると「地球規模の持続可能性」の道筋をつけるためにはいくつかの劇的な変化が必要だとしています。

1) 文化的嗜好と両立する食生活への転換を通じて、過剰消費を避け動物性タンパク質の消費を制限する。

2) 特に需要の伸びが大きい製品や地域において生産性を高めるために投資する。

3) 森林破壊を阻止するために、包括的で強固かつ透明性のある監視システムを実施する。

このシナリオにより、2030年までに最大1億ヘクタールの森林破壊と、2050年までに100ギガトンのCO2の排出が回避されると報告しています。


一方、我が国日本へ目を向けると、総合スコア 79.87%達成で世界18位に位置付けられていて、まあまあ頑張っていると思いきや、十分に達成できているのは目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」のひとつだけ。そのほかの16の目標についてはまだまだ取り組まなければならない課題が山積みといったところです。なかでも、相対的貧困が顕在化している目標2「飢餓をゼロに」はスコアがむしろ減少しているし、国会(衆議院)における女性議員数がわずか10.3%でしかないなど、達成には程遠い目標5「ジェンダー平等を実現しよう」などがあり、ほかにも目標12「つくる責任 つかう責任」、目標13「気候変動に具体的な対策を」、目標14「海の豊かさを守ろう」、目標15「陸の豊かさも守ろう」なども大きな課題が残ると指摘されています。


※SDSN(国連持続可能な開発ソリューションネットワーク):元国連事務総長の潘基文氏と世界的に有名な経済学者で教授のジェフリー・サックス氏によって2012年に設立され、国連事務総長の支援のもとに2,000以上の支援機関で構成されており、SDGs(持続可能な開発目標)とパリ協定に関する行動のために世界の大学、シンクタンク、国立研究所を動員して科学的証拠とアイデアを解決策と説明責任に変換するために活動している団体。



 
 
 

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