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目標16「平和と公正をすべての人に」

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今回は目標16「平和と公正をすべての人に」についてです。

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上のイラストを見たことがあるという方もたくさんいると思います。。本来は、「機会の平等」と「結果の平等」を区別する意図で描かれたイラストらしいのですが、最近のDE&I(Diversity=多様性, Equity=公正性 and Inclusion=包摂性)推進の流れの中で、意図的になのか、誤解からなのか、公正性の説明として「平等」と「公正」を比較したイラストとしてよく用いらるようになってしまいました。ここでは、後者に便乗して説明させてもらいます。

左のイラストは平等=Equalityを表していて、すべての人が同じ条件や機会を持つことです。代表的な例を挙げると選挙権です。(1票の格差などの問題はここではいったん無視しますが、)日本では、18歳以上であれば、年齢・性別・信条・社会的身分などに関わらず、一人につき1票が"平等"に与えられます。日本国憲法では第14条において、「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」として、「法の下の平等」が規定されています。

これに対して、右のイラストは公正=Equityを表しています。「公正」とは何でしょうか?公正とは、個々の状況や必要に応じて対応することです。つまり、個々が置かれている状況や、求めているリソースなどを知ることが前提になります。

例えば職場において、平等の観点でみると、同じ職務について、同じ結果を上げているならば、男女の区別なく、同一賃金が支払われるべきということになります。

でも、公正の観点でみると、女性は出産によるキャリアの中断などが発生することがあり得るので、それを踏まえて育児休暇やフレキシブルな勤務時間の導入、あるいはキャリアの継続を支援するプログラムなどを設けて、男性と同じゴールも選択できるような環境に配慮しておくことが重要になります。


さて、世界では、今この瞬間もどこかで紛争や戦争が絶え間なく起きています。紛争地域で暮くらす子どもたちは、およそ4億6,800万人もいると推定されていて、多くの子どもたちが暴力や迫害によって自身の命が奪われたり、大切な家族を失ったりしています。それらの人たちは、家や財産を失うだけでなく、住む場所すら追われ、難民とならざるを得ないこともしばしばです。現実にも、ロシアによる一方的なウクライナ侵攻や、イスラエルのガザ攻撃によるパレスチナ人迫害など、国際法などを無視した行為は、今も進行中の看過できない深刻な問題となっています。このような状況下では、貧困や飢餓、保健衛生状態の悪化、人権侵害などSDGsのあらゆる目標の達成が阻害されています。こうした事態に対処するために、国連では難民支援機関である国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)を通じて、故郷を奪われた人たちの命、生活、人権を守るために、援助を続けていますが、一機関で解決できる問題ではありません。


また、国連児童基金(UNICEF)によると、さまざまな理由で出生届が提出されず、公的な存在証明を持っていない子どもが世界中の4人に1人、1億6,600万人にも上るそうです。

出典:Birth Registration for Every Child by 2030: Are we on track?, UNICEF, 2019
出典:Birth Registration for Every Child by 2030: Are we on track?, UNICEF, 2019

このように出生登録がないと、たとえば予防接種が受けられない、学校に入学できない、犯罪に巻き込まれても裁判ができない、人身売買の被害にあって国外に連れ出された子どもが生まれた国に戻れなくなるなど、さまざまな問題に巻き込まれています。

我が国においては、戸籍制度が比較的充実しているおかげで、「教育」「医療」「公的サービス」などは、当たり前のように受けられることがほとんどですが、それでも児童虐待の件数は1990年から年々増加していて、1991年には20万7,659件もの児童虐待相談があったそうです。なかでも言葉や態度によって子どもを傷つける「心理的虐待」の件数は前年比で3,388名も増加していて、ネグレクトや性的虐待も、同じく増加傾向にあります。


こうした被害を受けるのは、子どもだけに限りません。内閣府男女共同参画局によると、日本国内で年間10万人以上もの被害者が、配偶者からの暴力、いわゆるドメスティック・バイオレンスについて支援センターに相談しているそうです。被害者の多くは女性で、男女格差社会や経済的な問題、子どもの教育環境の維持などを理由に、関係を断ち切れずに解決されないケースも多いようです。これを受けて、2001年にはDV被害者保護のために「DV防止法=配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」が制定されましたが、相談までたどり着けない被害者が殺人事件に巻き込まれるといった事件が後を絶ちません。


この目標16「平和と公正をすべての人に」は、こうした子どもたちを救うことはもちろんですが、戦争や紛争だけでなく、それによる難民問題、子どもや女性に対する暴力や差別の根絶、LGBTQ+など性的少数者に対する偏見や差別の一掃、特殊詐欺など社会的弱者を狙った犯罪の撲滅、そしてそれらに巻き込まれた人が、公平な裁判が行われる社会を目指すために掲げられています。

引用:gooddo Inc.
引用:gooddo Inc.

あらゆる争いごとをなくして、平和を実現すること。そのための法律など公正な制度をだれもが利用できるようにするために、透明性が高く効率的な行政機関が必要なのは言うまでもありませんが、汚職や腐敗の防止を目指す国際NGO トランスペアレンシー・インターナショナルによる「公務員の腐敗度ランキング」で、日本は20位にランクしています。近年、日本のランクを下げている要因として、政治家や行政機関が、事実確認に必要な公文書を破棄したり、書類を改ざんしたりといったことが頻繁に発生しており、それが問題視されました。

このような事態を防ぐためにも重要になるのが「選挙」なのですが世界200カ国・地域で行われた選挙の投票率を公表している国際NGO「民主主義・選挙支援国際研究所」が発表した2019年のデータによると、日本の投票率は、200カ国中158位という低さです。選挙権が18歳に引き下げられて初めておこなわれた2016年7月の参議院議員選挙でも投票率54.70%、昨年の衆議院議員総選挙においても53.85%という結果でした。有権者のたった半数の投票結果で政治が動いていくというのは、国民として、相当な危機感を持たないとならないと思います。


また、政治や行政に任せるだけでなく、私たち一人ひとりも、相手との違いを受け入れ、それぞれ相性や好き嫌いがあっても、「嫌い」とか「気に入らない」という理由で非難したり、攻撃したりせず、世界には様々な人種の人が暮らしていて、多様な文化や価値観にあふれていると、肯定的に認めて協力し合うことも大切ではないでしょうか。

とはいえ、近年は自国第一主義や移民排斥など、逆風が吹き荒れている感もありますが、公正で公平で、誰一人取り残さない社会を目指すSDGsの採択文書のタイトルである「Transforming Our World-我々の世界を変革する-」を実現するためには、多様な個人、組織、国が協力して取り組む以外には答えはないのではないでしょうか。


 
 
 

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