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目標10「人や国の不平等をなくそう」

更新日:6月4日

今回は、目標10「人や国の不平等をなくそう」についてです。

世界には様々な不平等が存在します。先進国と途上国、男性と女性、障害がある人とない人、人種や宗教など多くの不平等や格差があり、それぞれがつながっていたりもします。


その中で、まず取り上げるのが貧富の格差による不平等です。

今年5月8日に、米マイクロソフト社の共同創業者であるビル・ゲイツ氏が、ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団を通じて、自身の膨大な資産の99%を、今後20年間で社会へ還元すると表明しました。その金額は20年間で実に2000億ドル(約27兆円)に上るそうです。発表に際してゲイツ氏は自身のブログで、米実業家アンドリュー・カーネギーのエッセイ「富の福音」から引用して、「富を持ったまま死ぬ者は、不名誉のうちに死ぬ」との一節を紹介し、富裕層には社会に還元する責任があるとの考えを強調し、富める者の生き方の一方向を示したのではないでしょうか。

世界の人口は、2022年に80億人を超えましたが、そのうちの上位81人が持つ資産の合計が、残りの半分(約40億人)が持つ資産の合計よりも多いそうです。ひと握りの億万長者に富が集中しており、富める者はますます富み、貧しいものはますます貧しく、貧富の格差はますます広がっています。

フランスの経済学者、トマ・ピケティは、「21世紀の資本」という著作の中で、資本収益率は常に経済成長率を上回るという不等式が成り立つと主張しています。

つまり、資本から得られる収益率が経済成長率を上回れば上回るほど、それだけ富は資本家へ蓄積され貧富の格差はますます広がるので、世界的な富の再分配が必要だと提案しています。

ひとつの国の中でも、極度の貧困率が都市部では5.3%であるのに対して、農村部では17.2%と3倍以上も高くなります。このような経済的な格差が、教育や医療、金融サービスなどの面で不平等を引き起こし、さらに世代間で負の連鎖がつながってしまう、ということが起こっています。


では次に、国や地域による不平等についてです。

日本では、私たちの生活を支えるセーフティーネットとして、さまざまな社会保障制度が整えられています。もちろん、その中身を見るといろいろと問題があるのも事実ですが、世界的にみると以下に示した通り、社会保障の制度が整っていない国や地域に住んでいることで、不平等な状態に置かれている人がたくさんいます。

家族の収入がなくなったときに、国による手助けを受けられる子どもは3人に一人しかいませんし、出産時に手当を受け取れる制度がある国に住んでいる母親も半数に遠く及びません。

出展:UNICEF SDGs Club
出展:UNICEF SDGs Club

また、日本ではなかなか表面に出てくることは少ないですが、移民問題も不平等を象徴する大きな問題です。移民政策は国によって違いますが、データがある105カ国で比較してみると、移民の権利や経済的福祉までを政策に盛り込んでいる国は57%にとどまっています。一方で、多くの移民が危険で、体力的にもきつい、その国の人が付きたがらない仕事に従事していて、しばしば不当に安い賃金で働かされたり、暴力や人身売買などの犯罪に巻き込まれたりもしています。

それでも、2018年に移民が母国に送金した金額は6,890億ドル(約65兆円)にのぼり、そのうち約77%にあたる5,290億ドル(約58兆円)は、開発途上国あてだったということで、世界経済の活性化や開発途上国の生活の向上にもつながっています。

ところが近年、移民に仕事を奪われる(奪われている)と考える人や、文化や宗教、慣習の違いを嫌がる人の支持を受けて、欧米を中心に移民排斥をうたう政党が国会や地方議会で議席を伸ばして、国内の分断が広がるなどの問題も起きています。


日本においては、男女間の不平等はいっこうに解決できない問題のひとつです。

厚生労働省によれば、全労働者における男性の賃金に対する女性の賃金は69.5%にとどまっていますし、世界経済フォーラムによる「ジェンダーギャップ指数」によると、世界146カ国中日本は118位で、G7の中では最下位です。特に経済と政治の分野で不平等が激しく、上級職、指導的立場にある6人中5人が男性ですし、下院(衆議院)における女性比率は11.5%と極めて低い状態です。

これらの数字が象徴する一つの例が「選択的夫婦別姓制度」の問題ではないでしょうか。結婚により、主に多くの女性に姓が変わることによる不平等が生じているにもかかわらず、いつまでも世界標準になっていません。昨年の衆議院総選挙後には、やっとこの問題に片が付くかと思われましたが、ここにきてまた雲行きが怪しくなってきました。

 ※この問題は、ジェンダーギャップだけでなく、さまざまな問題が絡んでいるし、女性国会議員の中

  にも反対の方がいらっしゃいます。


また、SDGsのような大きな目標や問題を見ていく時に、私たちが常に気を付けなければならないことがあります。

下に示したのはブラジルの地図ですが、SDGsが採択される前のMDGs(ミレニアム開発目標)で目標4に掲げられた、「1990年から2015年までに、5歳未満の子どもの死亡率を3分の2引き下げる」という目標の達成状況を示した、2008年のデータです。

出展:UNICEF SDGs Club
出展:UNICEF SDGs Club

国レベルでみると、1,000人中1.0~17.5人という目標を達成していますが、これは首都ブラジリアや、リオデジャネイロ、サンパウロなどの人口が多い都市部で改善が進んだことで、国全体の平均を押し上げた結果なのです。②州レベル③市町村レベルと、より細かく見ていくと、まだまだ改善が進んでいない地域が多く存在しており、"平均"という数字での判断が多くの人を取り残してしまう結果につながりかねません。もちろん、一概に平均が悪いということではなく、いろいろなデータを細かくとって、あらゆる角度から分析するなど、きめ細かな検証をしていくことで、「誰一人取り残さない」というSDGsの理念にも合致するのではないでしょうか。

 
 
 

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