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自動車レースのサステナビリティ

地球環境のサステナビリティが世界的な潮流となる中、様々な業種・業界においてその推進が進められています。スポーツ界においても、2018年12月に国連気候変動枠組条約(UNFCCC)と複数のスポーツ団体との間で策定した「気候アクションのためのスポーツ原則(Sports for Climate Action Principles)」を発表しました。同原則には国際オリンピック委員会(IOC)や国際サッカー連盟(FIFA)など、当初17機関・団体が署名し、その中には自動車レースのFIA(国際自動車連盟)フォーミュラE選手権も含まれていました。フォーミュラEは電気自動車の世界最高峰レースで日本の日産自動車などが参戦していて、昨年は東京の市街地コースを使用して実施され話題になりました。24-25シーズンも東京を含む世界10都市で全16戦が開催される予定です。

自動車業界は近年、100年に一度の大変革期ととらえられ、「電動化」や「自動化」などが推進されていて、自動車レースにおけるサステナビリティの一つの回答ととらえることもできるかもしれません。


一方で自動車レースの最高峰と位置付けられるFIAファーミュラ1選手権(F1)においてはどのような動きがみられるのでしょうか。

かつてのF1レースでは、スピードとパワーが絶対視され、燃費や効率よりも最大馬力が求められてV12やV10などの大容量エンジンが咆哮を上げていました。しかし時代が移り、このスポーツ自体のサステナビリティが問われるようになってくる中、FIA自体も2019年にUNFCCCの「気候アクションのためのスポーツ原則(Sports for Climate Action Principles)」に署名しました。FIAは2021年にカーボンニュートラルを、2030年にネットゼロカーボンを目指すという野心的な目標を発表しました、その一環として、すでに2014年からF1にハイブリッドパワーユニット(PU)を導入していますが、これは内燃エンジン(ICE)と電気モーターの組み合わせにより効率的でパワフルなシステムが組上げられていますが、ここにはエネルギー回生システム(ERS)が含まれており、通常であれば失われてしまうエネルギーを回収して再利用することで燃料効率に革命をもたらした。


そして2026年からF1のレギュレーションが大幅に改定され、より安全でしかもエキサイティングなスポーツを目指しています。これはF1が二酸化炭素(CO2)の排出に関する批判に対しての回答として、CO2の排出削減とサスティナビリティの促進を目的として実行するものです。その内容の重要なポイントとしてハイブリッドPUのさらなる進化が上げられます。ICEの基本は現状と同じ1.6リッターV6のレイアウトですが、燃料流量が削減され、1レースあたりで使用できる燃料は70~80㎏(現行は110㎏)までと制限されるようです。特筆すべきはMGU-K(ブレーキング時に発生する運動エネルギーを電気エネルギーへ変換する)によってもたらされるERSによる電気出力を350kWへと引き上げることです。これは現行(120kW)の約3倍に上り、ICEと電気によるパワーをおよそ50:50にするという取り組みです。また高コストがたびたび問題となっていたMGU-H(エンジンから出る廃棄熱を利用して電気をつくる)は廃止されることにより、新たなPUサプライヤーの参加にも扉を開きました。

そしてもう一つ重要なのがICEに送られる燃料です。人間や動物の消費を目的とせず、バイオ廃棄物のみを使用して精製されるこのバイオ燃料は、100%持続可能であり、燃焼効率の向上と環境負荷の低減を両立するサステナブルで意欲的な戦略の一環です。


ほかにも車体の軽量化や新たなエアロダイナダイナミクスなど、2026年からの様々な取り組みが発表されていますが、これらはこのスポーツ自体の持続可能性を高めるとともに、自動車、モビリティの世界に画期的なアドボカシー能力を与えることになるかもしれません。


日本ではホンダ(本田技研工業)が、PUサプライヤーとして2015年から続いた第4期の活動を、サステナビリティへの取り組みを理由の一つとして、2021年シーズンをもって公式にはF1から撤退したものの、F1のこうしたサステナビリティへの取り組みが発表されたことで、2026年から再参戦することが2023年5月に正式表されています。

 
 
 

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