目標14「海の豊かさを守ろう」
- Shuichi Yamamoto
- 6月30日
- 読了時間: 4分

今回は、目標14「海の豊かさを守ろう」です。海は、四方を海に囲まれた島国、日本に暮らす私たちにとって、多くの恵みをもたらしてくれる、とても身近な存在ですが、持続可能な地球という視点で捉えると、多くの問題を抱えています。
海は、私たちに魚などの食べものをえてくれるだけでなく、私たちが暮らしている環境も守ってくれています。地球の表面の4分の3は海が占めています。その海水の量は、地球上の水の、なんと97%にもあたります。この海洋が、人間が産生する二酸化炭素(CO2)の約30%を吸収し、大気中のCO2の濃度を調整し、私たちが呼吸する酸素の約半分を生産してくれています。また、熱の吸収などを行うことで、地球温暖化の影響を緩和してくれていたりもします。
ところが今や、私たち人間の活動によって大気中に放出されるCO2の量が増え続け、海が以前よりも多くのCO2を水中に取り込むことで、海水の成分が酸性化する「海洋酸性化」が急速に進んでいます。CO2の排出量が現在のペースで増え続けると、今世紀末までに酸性度は100~150%上昇すると予測されています。
それによって気候変動の緩和という、海が持っている大切な役割が大きく阻害されることが危惧されます。
もう一つ、海の豊かさを守るうえで問題になっているのが、海洋汚染です。
世界の海洋汚染の約80%は、陸の活動で発生した汚染によるものだとされています。処理されることなく排出される農業排水、沿岸の観光、港湾の開発、河川のせき止め、都市開発と建設、鉱業、漁業、養殖業、および製造は、沿岸および海洋にくらす生き物の生態を脅かす海洋汚染の原因となっています。また、全世界で毎年2億2000万トンを超えるプラスチックが生産されていますが、適切な廃棄方法が検討されていないことがまだまだあります。これらのプラスチックが廃棄されると、風化して、マイクロプラスチックと呼ばれる非常に小さな破片になります。これらは、プラスチック製のペレットとともに、世界中のほとんどの海岸ですでに見られます。これにより、毎年100万羽以上の海鳥と10万以上の海洋哺乳類が死んでいるといわれます。わたしたちがこのままの生活を続ければ、2050年には海に捨てられるプラスチックが魚の量を上回ると推測されています。
この問題の対策として、使い捨てプラスチックの使用を減らす、リサイクルを促進する、環境負荷の少ない素材への転換を進めるなどの対策が進められていますが、海は世界中でつながっていますので、国際的な協力体制の構築および連携が不可欠です。
海は私たちの"食"にとってもなくてはならない存在です。海から得られる食料は世界最大のタンパク質源であり、世界で30億人以上が身体に必要なタンパク質を海からの恵みに頼っています。
しかし、魚やエビ、貝などの水産資源は生物ですから、そのライフサイクル以上に獲りすぎてしまえば、繁殖できなくなって、個体数は減少してしまいます。そして、残念なことに、生物学的に「持続可能」な水準にある魚類資源の割合は1974年の90%から、2015年には67%へと減少してしまっています。

でも逆に考えれば、繁殖していくスピードや個体数の把握など科学的な知識を生かして、とりすぎないように管理していけば、海の恵みは「持続可能」な水産資源になるということです。
昨年は現実にこんな発表がありました。「2025年以降の太平洋クロマグロの年間漁獲枠を各国とも1.5倍に拡大する」というものでした。これは、乱獲によって激減した太平洋クロマグロをめぐって、日本、韓国、米国、中国に太平洋の島しょ国などを交えた26カ国・地域が参加する中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)が、2015年から国際的な漁獲規制を導入して保護してきた結果、資源量が回復したことで実現しました。これは、管理型漁業の確立に向けたおおきな成果ととらえることができます。
海のエコラベルMSC認証・ASC認
こうした管理型漁業を推進する取り組みとして、MSC認証・ASC認証という認証制度があります。
MSC認証は、Marine Stewardship Council(海洋管理協議会)が運営する、持続可能な漁業を認証する制度で、漁業に対する「MSC漁業認証」と、水産物の加工・流通段階に対する「MSC CoC認証」の2種類があります。MSC認証を受けた水産物は、サプライチェーン全体にわたり、非認証のものとは分けて扱われます。認証水産物は持続可能な漁業で獲られたものであることが明確なかたちでラベルが付けられるため、消費者は安心して選ぶことができます。

ASC認証は、Aquaculture Stewardship Council(水産養殖管理協議会)が運営する、環境と社会に配慮した責任ある養殖業を認証する制度です。ASCの7原則には、生物多様性や水資源、適切な化学物質の管理などの「環境」への配慮と、国や地域の法律への準拠や地域社会に対する責任と適切な労働環境など人間に焦点を当てた「社会」への配慮の2つの視点から成り立っています。ASC認証は、養殖業者が持続可能な生産に取り組むための指針となるとともに、私たち消費者が安心して水産物を選べる基準にもなります。
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