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目標11「住み続けられる まちづくりを」

今回は、目標11「住み続けられるまちづくりを」についてです。正式には「包摂的で安全かつ強靱(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現する」ことを掲げた目標です。

SDGs達成を目指す上で、最も大切な理念のひとつが「誰一人取り残さない」ことであり、そのためにもこの目標はとても重要です。


2022年に世界人口は80億人を超えましたが、そのうちの約半数が都市に居住しているそうです。その「都市」は地球上の陸地面積のわずか3%を占めているにすぎませんが、そこに40億人もの人間がひしめきあっている状態です。それが2030年には50億人に達すると予測されています。

そのため、貧困、気候変動、医療、教育など、私たち人類が直面する課題の多くは、都市での解決方法を見出さなくてはなりません。

出展:総務省(国際連合「世界の都市人口の展望」を基に作成)
出展:総務省(国際連合「世界の都市人口の展望」を基に作成)

例えば貧困についてですが、都市部で貧しい人々が多く居住するスラムの住人はは、8億3,300万人を超えて、いまも増え続けています。スラムの住民の多くが、都市部に住んでいながら、安全な水や衛生的なトイレ、電気やガス、安全で安価な交通網など、都市住民が享受出来るはずのサービスにアクセスできていません。また、都市圏の拡大に伴い、大気汚染や水質汚染などによる健康被害も拡大していて、高度な医療にアクセスしにくいスラムの住民に、より深刻な影響を与えます。これらに対応して国連でもスラム住民の生活を改善し、住居を提供するなどの対策を実施していますが、都市人口の増加に対してスピードが追い付いていないのが現状です。


次に気候変動による自然災害の多発に対する懸念もあります。都市で消費されるエネルギーは、全エネルギー量の60~80%を占め、CO2排出量の75%を占めます。立地条件や人口密度などの条件によって違いはありますが、気候変動や激甚化する自然災害の影響を受けやすい都市も多いため、人的被害はもちろんですが、経済的、社会的損失を避けるためにレジリエンス化が必須の課題となっています。

日本でも、宮城県仙台市は2011年3月11日に発生した東日本大震災の教訓をもとに、復興を進めるうえで「防災」という視点を重視して、「防災環境都市・仙台」をテーマに街づくりを進めているそうです。その甲斐あって、2012年には国連防災機関(UNDRR)が実施する「世界防災キャンペーン『災害に強い都市の構築』」において、ロール・モデル都市に認定されました。

もちろん、都市のレジリエンス構築においては、インフラ整備などのハード面とともに、ハザードマップの周知や地域コミュニティの円滑化など、ソフト面の充実も求められています。


農村部から都市部への人口流入は、日本でも顕著に表れていて、地方の人口減少や少子高齢化は深刻な問題になっています。

出展:総務省統計局
出展:総務省統計局

日本においてさらに深刻なのは、農村部だけでなく多くの地方都市でも人口流出が進んでおり、過疎化が加速しています。環境省の報告書によると、2050年までに、全国の居住地域のうち約2割の地域が無居住化し、それらも含めて約半数の地域で人口が50%以上減少するなど、過疎化が更に進展すると予測されています。

これらの地域では、インフラの老朽化や空き家の増加、さらには公共交通機関などの社会的機能も低下して、生活水準の維持すら難しくなるような状況が危惧されていますが、地方に住む人たちも含めて、「誰一人取り残さない」持続可能な街づくりが求められています。

日本政府においても、地方創生の理念のもと、SDGs Model Project ―未来へつなぐまちづくり― として事業化して、「自治体SDGsモデル事業」「広域連携SDGs未来都市」「地方創生SDGs課題解決モデル都市」を選定していて、2024年までに全国206都市がSDGs未来都市に選定されています。


もう一つ、日本が直面している喫緊の課題が少子化の問題です。先日6月4日に、厚生労働省は2024年の日本人の人口動態統計を公表しました。それによると、2024年に生まれた子ども(出生数)は、68万6,061人で初めて70万人を下回り、統計がある1899年以降最少となったとのことです。1人の女性が生涯に産む見込みの人数を示す合計特殊出生率も1.15と過去最低を更新し、いずれも9年連続の下落となりました。この数字は、国立社会保障・人口問題研究所の推計より、15年も速いペースで少子化が進んでいて、高齢化と相まって人口減少がさらに進んでいます。これは、社会保障や税、さらに労働力不足による経済の停滞など、さまざまな問題につながっていきます。

出展:国立社会保障・人口問題研究所
出展:国立社会保障・人口問題研究所
出展:国立社会保障・人口問題研究所
出展:国立社会保障・人口問題研究所

高度経済成長期の1970年と今から25年後の2050年の人口構成を比べると、いかにいびつな形になっていくかがわかります。

この問題は、住み続けられる街はおろか、住み続けられる国を維持していくためにも、日本が何をおいても取り組まなければならない課題のひとつです。


最後に、私自身が好きなことのひとつに、お祭りの神輿を担ぐことがあるのですが、お祭りに代表されるその地域に受け継がれてきた文化を、少子高齢化が進む中で継承していく方策を見つけていくことは、世代を超えて住み続けられる街づくりを進めていくことにもつながるのではないでしょうか。


 
 
 

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